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取るに足りないもの




 ようやく自分のもとへ戻ってきた反町の姿を見て、湊吾は息を飲んだ。
 彼は全身、血塗れだった。
 返り血も勿論あるだろう。しかしながら、端正な顔は泥に汚れ、頬は腫れているし、唇もどうやら切っている。
 綺麗な髪もばさばさだ。
 歩き方がどこかぎこちないのは、足でも痛めたのだろうか。

「反町……!」

 咄嗟に駆け寄った湊吾を見て、僅かに安堵の笑みを浮かべた反町が、その場でかくんとくずおれた。
 間に合わなかったのも、ある。
 だが、今その痩身を抱きとめるのは違う気がした。
 すんでで堪えた主人の目の前で、もう一度立ち上がる力もないのか、美しい従者が片膝をついている。
 まるで、かしずくような、その姿。

「申し訳ありません……。少し、手間取りました……」

 謝るのか。
 その体勢で、侘びるのか。

「反町……。本気で危ないようなら、ちゃんと逃げなよ? 逃げることだって、戦闘の内だって習ったろう?」
「私が帰る場所は、あなたのお傍です。……片付けるまでは戻るわけにはいきません」
「でも……!」

 噛みつく湊吾に、何故か反町は不思議そうな表情を向けた。

「? ……命など――……。私の存在は、あなたのもの。取るに足らないことですから……」


 微笑む。

 湊吾は幼馴染みの笑った顔が大好きだ。
 でもこれは違う。
 胸が締め付けられる感覚に、湊吾の顔が歪んだ。
 どこまでも従者としての立場を崩さない男。
 彼の忠誠心など、この身に馴染んでしまってもう切り離せないというのに、今はそれがもどかしかった。

「そんなこと……言わないで……」
「……湊吾さま?」
「取るに足りないものなんかじゃない。大事なんだよ。……わかってよ……」

 その場にしゃがみこんだ湊吾の身体に、にじり寄ってきてくれた反町の手が伸ばされる。
 いつもは真っ白で、綺麗に手入れされたそれが、あちこち傷つきすっかり汚れてしまっていた。

 悲しい。


「……たんまち……」
「なんです……子どもみたいに……」

 傷んだ痩躯に負荷がかかるのはわかっていたが、湊吾は反町を強く抱き寄せた。
 まるで、幼子が縋りつくように。
 変わらぬ優しい手が、大きくなってしまった湊吾の背中を、ずっとずっと撫で続けていた。



end.




プラセボ】こち様への贈呈品。ラフ画からのイメージテキスト。
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Date:2013/06/01
Trackback:0
Comment:0
Thema:BL小説
Janre:小説・文学

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