FC2ブログ
 

mj.エンドルフィン

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

FC2拍手のタグ
*    *    *

Information

□ IHATOV □

瑞香

※まだ梶浦&一ノ木の細かな設定が出来る前のテキストが発見されたので蔵出し。
プロトタイプカジイチ、学生時代です。






瑞香



 窓から入ってくるなよやかな風が、目の前の長い黒髪を揺らす。
 癖のない真っ直ぐな髪は、ぞんざいとも取れる括り方で緩く一つに結われ、持ち主の背中に流れていた。
 いつも思うのだが、男のものとしては少々長すぎやしないか。
 しかし願掛けなのか何なのか、未だ以って友人は髪を伸ばし続ける理由を教えてはくれないのだが。
 さわさわとカーテンをなびかせる風に乗って、仄かに甘い香りが鼻腔を擽る。
 この薫りを放つ花が好きだ。花弁に少し可憐な紅色を混ぜた、白い小さな花束を咲かせる木。だが、今は沈丁花の咲く季節ではない。香りの元は、目の前でパソコンに向かっている男だった。
 傍らの座椅子に凭れて漫画を読んでいたのだが、ふとその横顔を見るとはなしに見つめる。

「なぁ」
「……どうした」

 小さな声で呼ぶと、キーボードを打つ手も止めず、友人が感情を窺わせない声音で返事をする。そのまま言葉を続けずにいると、午後の薄暗さをも拒絶する白皙の美貌が振り返った。
 冷静沈着な友人は、整った顔とその態度から、冷たい男と言われがちだ。

「民俗学のレポート、まだ終わらないのか?」
「……退屈なのか?」
「まぁ、少し」

 腰を上げてデスクに近づくと、僅か困ったように見上げてくる。
 綺麗な顔だった。
 自分はこの顔が好きなのだと、見るたびに嫌でも思い知らされる。端整な造作は男にしておくには勿体無いと感じるが、しかし、女であればとは思ったことはない。端麗ではあるが、女性的ではないのだ。このまま女になったとしても、それは気味が悪いだけだろう。

「もうすぐ終わるから……」
「早く終わらせないと悪戯するぜ」
「それじゃ却って終わらないだろ……って……こら、やめろ」
「いい匂い」
「くすぐったい」

 耳の裏から仄かに立ち上るのは、切なさに似た感情を喚起させる香水の香り。長い髪同様、なぜ友人が沈丁花の香水を好んでつけているのかは、やはり不明のままだ。
 この男の肌の匂いと混じった、甘いラストノート。どこか冷淡な友人の、ただ一つの甘やかな部分である。
 好きだなぁ、と、ぼんやり思った。



end.


スポンサーサイト

FC2拍手のタグ
*    *    *

Information

Date:2013/11/13
Trackback:0
Comment:0
Thema:自作BL小説
Janre:小説・文学

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。